社外監査役の役割とは?選任の要件や手続、設置するメリット・デメリットなど解説

社外監査役の役割とは?選任の要件や手続、設置するメリット・デメリットなど解説

株式会社にはさまざまな種類の役員が存在しています。設置が必須とされるものもあればそうでないものもありますし、状況に応じて設置が義務となるものなど、パターンもさまざまです。

その役員の一種である「社外監査役」に焦点をあててここでは解説をしています。

どんな役割を持つのか、何のために設置するのか、会社にどのようなメリット・デメリットをもたらすのか、選任手続なども併せて紹介します。

社外監査役とは

株式会社では取締役・会計参与・監査役の三者が役員と呼ばれます。

取締役はまさに経営者のことであり、これを会計の面でサポートするのが会計参与です。一方で監査役は取締役などの業務をチェックし、適正な会社経営を維持するための存在です。

そのため同じ役員とはいえ、取締役などとは大きく性質が異なります。取締役とは少し距離を置くことが望ましいといえ、社外の立場から監査役に就くケースもあります。これを「社外監査役」と呼んでいます。

社外監査役の要件

社外監査役については会社法で定義が置かれています。

十六 社外監査役 株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
イ その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。ロにおいて同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

引用:e-Gov法令検索 会社法第2条第16号
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

現在その会社の取締役や会計参与、従業員でないことはもちろん、過去10年間においてもこれらの立場になかった人物でなければ社外監査役にはなれません。親会社や子会社などで役員や従業員であった経歴にも注意が必要ですし、役員等の配偶者や二親等内の親族(兄弟姉妹、祖父母、孫など)であってもいけません。

社外監査役にはできるだけその会社との癒着が排除されなくてはいけませんので、このように厳格な要件が定められています。

監査役(社内)との違い

社内に属する一般的な監査役と基本的な役割に違いはありません。

違うのは取締役や従業員などとの近さです。常にその会社で働いていると、監査役という立場であってもある程度人間関係ができてしまい、なれ合いになってしまう可能性も否めません。そうなると純粋に客観視することができず、監査役に求められる本来の機能が十分に発揮できなくなるおそれがあるのです。

しかし社外監査役は前項で説明した通り、過去に至るまでその会社の人たちとの人間関係が希薄ですので、厳しい目で監査を行いやすくなります。

非常勤監査役との違い

監査役は常勤監査役と非常勤監査役で分類することもできます。

これらに関しては法律で定義されたものではなく、勤務実態で区別した呼び方に過ぎません。ただ、多くの場合社内の監査役については常勤となるケースが多いですし、社外監査役に関しては別の会社で役職に就いていることも多いため事実上非常勤監査役となるケースが多くなります。

社外取締役との違い

社外監査役と社外取締役は、“社外”という点でのみ共通しているだけで、まったく異なる存在です。

社外監査役が社内の監査役と基本的に同じ職務にあたるのと同様、社外取締役も基本的な職務は社内の取締役と異なりません。あくまでも取締役として会社の経営を担う存在です。

ある程度会社からの独立性が確保されてはいますが、職務遂行について監査役からチェックを受ける立場に変わりはありません。

社外監査役の役割・仕事

社外監査役に求められている役割・仕事は、大きく①取締役に対する監査と②会計に対する監査、の2つです。法的には一般的な監査役と同じで、これらの業務を社外の立場から実行します。

取締役に対する監査

社外監査役・監査役に求められるもっとも重要な役割が「取締役に対する監査」です。

株式会社では所有と経営が分離しており、会社の所有者とも呼べる株主とは別に、取締役が会社の経営を担っています。取締役は株主から頼まれて(厳密には会社からの委任)経営を行っているのであって、取締役は株主の利益を考えて会社経営をしなくてはなりません。
※取締役が株主も兼ねているケースも多いが、役員や従業員ではない株主が存在するケースも少なくない。

しかしながら、株主が取締役の行為について細かくチェックすることは難しく、しかも取締役の権限は大きいため、隠れて不正をはたらくこともできてしまいます。これを防ぐために監査役は存在しています。

そこで社外監査役を含む監査役には次の権限が与えられています。

  • 役員等に対して事業の報告を求める権限
  • 会社財産に関する調査を行う権限
  • 取締役の不正行為を止める権限
  • 取締役の責任追及を行う訴訟において会社を代表する権限

会計に対する監査

社外監査役を含む監査役たちには「会計に対する監査」も託されています。

取締役の行為だけでなく、事業活動の結果が反映される財務諸表などのチェックも監査役が行います。株主や取引先は会社の業績などを評価する際、財務諸表の数字などを読み取ります。そのため作成された書類には適正性が担保されている必要があるのです。

そこで、会計に関する手続が適正に行われたか、作成された計算書類は適正なものであるか、この点についても監査を行います。

社外監査役を置くメリット・デメリット

社外監査役を置かないといけない会社もいますが(詳しくは後述)、任意にこれを設置することも可能です。

社外監査役を置くことでどのような影響が出るのか、メリットとデメリットに分けて紹介します。

社外監査役がいることのメリット
経営の透明性の向上 社内の人間関係やしがらみにとらわれず独立した立場から経営を監視できることで、企業の意思決定プロセスがより透明化され、ステークホルダー(株主、従業員、取引先など)からの信頼を得やすくなる。
問題点の早期発見 社外監査役には豊富な経験や専門知識を持つ人材が選ばれることが多く、社内では気づきにくい問題点やリスクをいち早く察知できる。不正会計の兆候、コンプライアンス違反のリスクなどを早期に発見し是正を促すことで、企業の損失を防ぎ、持続的な成長が支援される。
コンプライアンスの強化 法令や社内規程の遵守状況を定期的にチェックし、問題があれば改善を促す。社内のコンプライアンス意識を高めるための研修・啓発活動の提案をすることもあり、企業全体のコンプライアンス体制が強化され、法令違反や不祥事のリスクを低減できる。
企業価値の向上 上記のメリットを通じて、リスク管理体制やガバナンス体制が強化され、経営の精度も向上する。その結果、投資家などからの評価が高まり、企業価値の向上につながる。
社外監査役がいることのデメリット
コストがかかる 社外監査役の報酬が発生する。専門性が特に高い人材を選任するならそれ相応に報酬も高額になる。
経営のスピードが落ちる可能性がある 経営の意思決定に意見を述べる権利を持つため、意思決定に時間がかかってしまうケースもある。
社内との軋轢が生まれる可能性がある 厳しい視点で経営を監視することで、経営陣や従業員との間で意見が対立し、軋轢が生じる可能性がある。

社外監査役を置かないといけない会社

特定の会社には社外監査役の設置義務が課されます。

法律上、「監査役会を置く場合はその半数以上を社外監査役にしないといけない」と定められています。監査役会の設置は原則自由なのですが、次に掲げる会社には設置義務が課されますので、結果的に社外監査役の設置も義務となります。

大会社
(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)
公開会社
(株式の譲渡制限がかけられていない上場会社など)

※指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社には監査役会の代替となる機関があるため、監査役会は設置しない。

選任の流れ

社外監査役を置く場合、まずは社外監査役となってくれる人物を探し出し、その方から承認を得ましょう。

また役員を置くには、「株主総会での選任決議」を要します。さらに役員に関する情報は登記事項ですので「登記申請」も欠かせません。

候補者の選定

社外監査役の候補者を選ぶときは、まず上記の法令上の要件を満たしていない人物を除外します。そのうえで、社外監査役としての適性を持つ人物を選ぶことが重要です。

重要なポイントは「高い専門性を持つこと」です。会計や財務の知識、法律の知識、業界の知識、そして経営に対する知識や経験を持っていることが望ましいです。そこで社外監査役として元経営者はよく採用されていますし、他にも弁護士などの専門家を採用するケースも比較的多いです。

株主総会での選任決議

社外監査役としてふさわしい人物を候補者として立てて、株主総会で選任決議を行いましょう。

この場合、「普通決議」の要件を満たせば選任できます。

《 株主総会の普通決議の要件 》

  • 定足数:行使できる議決権の過半数
  • 表決数:出席した株主の議決権の過半数

ただしいったん選任した社外監査役を解任するには「特別決議」を要します。簡単に辞めさせることはできませんので注意してください。

《 株主総会の特別決議の要件 》

  • 定足数:行使できる議決権の過半数
  • 表決数:出席した株主の議決権の2/3以上

役員変更の登記申請

無事賛成を得られても、まだ登記の手続が残っています。取引先など社外との関係においてその選任の効力を主張するには、登記を行わないといけないのです。

申請にあたっては申請書を作成するほか、いくつかの必要書類を準備しないといけません。

  • 適切な手続により選ばれたことを証明するための、「株主総会議事録」や「株主リスト」。
  • 社外監査役による「就任承諾書」と、その方についての「本人確認書類(マイナンバーカードや住民票、印鑑登録証明書など)」。
  • 登記申請については司法書士に依頼することが多く、司法書士に任せたときは「委任状」も作成する。

もし「社外監査役の設置について悩んでいる」「選任手続の進め方がわからない」とお悩みなら、まずは弁護士にご相談ください。

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