自宅を失わずに債務整理をする方法| 個人再生や自己破産の前に知っておきたいこと

自宅を失わずに債務整理をする方法| 個人再生や自己破産の前に知っておきたいこと

借金が返せず破綻状態に陥ってしまったときは、早めに債務整理を始めましょう。ただし債務整理の手続きによっては自宅を処分されてしまう可能性もありますので、現在の住まいを確保しておきたいという場合は弁護士とも相談しながらこちらで紹介する方法をご検討ください。

借金が返せなくて困っているときの手続き

借金の返済に耐え切れなくなってきたときは、一度債務整理を行うことをお勧めします。債務整理にも次の種類がありますので、ご自身の状況に最適な手続きを検討しましょう。

任意整理 裁判所の手続きによらず、借金の貸主との直接交渉により今後の支払額や方法を取り決めるもの。
当事者間の話合いによる手続きであるため、自由度は高い分、上手く話がまとまらなければ問題は解決させられない。
特定調停 裁判所が間に入り当事者間での和解を目指す手続き。公的な任意整理のようなもので、より公平な交渉が期待できるものの、最終的には合意が必要となる。
個人再生 民事再生法に基づいて裁判所で再建を図る手続き。民事再生のうち個人でも利用しやすく特化された仕組みが個人再生。
将来的な収入の見込みがあることや、ある程度の返済能力が残っていることを前提に、支払総額を大幅に減額させられる。全債権者の同意までは不要であるが、合理性のある再生計画策定が必要。
自己破産 破産法に基づいて裁判所で清算と免責を行う手続き。
財産関係を清算して、残った債務につき免責を求める。免責許可により残債務は消滅するが、最低限の財産を除き、自宅など資産価値の高いものは処分されてしまう。

自宅の処分が必要になるかもしれない

債務整理によって借金問題を解決させられるかもしれませんが、その際、自宅の処分が必要になる可能性があります。

例えば自己破産だと残してもいい財産の範囲が決められており、自宅についても競売にかけられる可能性が高いです。その他預貯金や自動車、貴金属など、債権者への配当に使えそうな財産は処分されてしまいます。

個人再生の場合も原則として全債権者に債務整理の影響が及びますので、住宅ローンがまだ残っている場合には金融機関が抵当権を実行し、競売が開始されます。その他の債務整理においても、住宅ローンの返済ができなくなったときには競売にかけられ、自宅を失うことになってしまうでしょう。

そのため住宅ローンが残っている場合やその他自宅を残したいときは、手続き方法についてよく考えてから着手することが大事になってきます。

任意整理で自宅を残すには

任意整理では裁判所を利用せず、交渉を持ち掛けた相手方とのみ債務整理を進めます。そのため自宅に抵当権が付いている場合でもこれと無関係の債権者相手であれば競売されることなく借金等の負担を軽減することができます。

債権者との交渉次第

任意整理の良さは「手続き方法が法律で定められていないため、柔軟な交渉ができること」にあります。その他「手続きが複雑ではなく弁護士費用も含めて比較的低コスト」「他人に知られることなく手続きを進められる」などのメリットもあります。

ただし任意整理で債務の負担を減らせるかどうかは交渉次第であり、同じような事案でも相手方によっては頑なに交渉に応じないこともあるためなかなか結果についての予測も難しいです。

注意点

任意整理は柔軟に解決方法を模索できる利点を持つものの、債務をまるごと免除するような大きな効果は通常得られません。軽減できる可能性のある負担は利息分に限られ、支払い回数や支払い時期などで調整をしてもらう程度のことしか期待できません。

そこで残債務の額がとても大きな場合には利用が難しく、分割弁済を求めるにしても3,4年程度で対応できなければ和解は難しいでしょう。

特定調停で自宅を残すには

特定調停という裁判所の手続きもあります。個人再生や自己破産ほどの強制力は持たないものの、公的な力を借りて債権者との交渉を進めることができます。

任意整理と近い性質を持ちますが、強制執行を止める効力を持っています。つまり差し押さえにより自宅を失うリスクを特定調停によって防ぐことができるのです。

簡易裁判所での申し立てが必要

特定調停を利用するには、簡易裁判所への申し立てをしないといけません。

《 特定調停の流れ 》

1. 債権者の本支店所在地の管轄簡易裁判所へ申し立て
2. 裁判所が債権者に特定調停の通知を行う
3. 債権者からの取り立てが止まる
4. 裁判所での話し合いを行う
5. 合意が成立すると特定調停は成立
6. 合意内容に従い3~5年ほどで返済していく

「裁判所での手続き」と聞くと大変そうに思うかもしれませんが、調停は一般の方でも利用しやすいように制度が作られています。専門家を利用しなくても手続きを始めること自体は可能でしょう。ただし裁判所の方でサポートをしてくれるのは制度に関する助言までであり、債務者の味方となって交渉をすることはありません。

注意点

特定調停も任意整理と同じで、相手方との合意がなければ成立しません。裁判所での手続きとはいえ相手方に強制できる類の制度ではないのです。

また、特定調停による効果は個人再生や自己破産に比べると小さく、支払総額があまり減らない可能性があることも知っておきましょう。

個人再生で自宅を残すには

債務の額が大きく、任意整理や特定調停では自宅を守れないという場合、個人再生の手続きを検討します。

また、これまでの弁済状況からして相手方が交渉に応じてくれなさそうなとき、住宅ローン以外の債務について大幅な減免がなければ弁済の継続が困難なとき、なども個人再生という法的整理手続きを利用すべきでしょう。

ただし、「個人再生なら自宅を残せる」と単純に考えてはいけません。原則として個人再生は全債権者を巻き込む強制力の大きな手続きですので、自宅を残すには特則の適用条件を満たす必要があるのです。

住宅ローン特則の利用が必要

個人再生について規律した民事再生法では住宅資金特別条項というものが設けられており、この条項に基づく特則を「住宅ローン特則」と呼んでいます。これは住宅ローンだけを除外して債務整理をしても良いとする特別のルールで、その利用条件を満たすことができれば自宅を残しつつ債務の圧縮を図れます。

満たすべき条件は次の通りです。

住宅ローン特則を利用する条件 備考
除外したい住宅ローンが「住宅資金貸付債権」であること ※住宅の建設、購入、改良などを目的に発生した債権でなければいけない。
住宅ローンにより建設・取得した住宅に債務者が居住していること ※住所をそこに設定するだけでなく、現に居住していないといけない。
※床面積の半分以上を、事業用など居住目的以外で使っているときは満たさない。
住宅ローン債権者やその保証会社以外の債権者のために抵当権を設定していないこと
住宅ローンを滞納したことによる保証会社の代位弁済が発生していないこと ※代位弁済がなされてからまだ6ヶ月を過ぎていないなら申し立て可能。

注意点

個人再生で住宅ローン特則を利用できれば、自宅をそのままに、大きく負担を減らすことができるでしょう。

一方で、全債権者を巻き込むことから信用に対する棄損の度合いが大きいというデメリットもあります。10年程度は信用情報登録機関に債務整理をした事実が登録されるでしょう。

また、費用が発生することや、手続きが複雑で長期間を要する可能性が高いという難点も持っています。

自己破産で自宅を残すには

個人再生でも弁済の継続が難しいという状況なら、自己破産を選択する必要があります。しかしながら自己破産をすると原則として資産は売却されてしまいますので、自宅を残すには工夫が必要です。

リースバックが必要

自己破産をするしかない状況にあるなら「リースバック」と呼ばれる方法を検討しましょう。

リースバックは、自宅を第三者に購入してもらい、その買手から家を貸してもらう契約をいいます。住宅ローン特則のような公的な制度ではなく、私的な契約に基づく自宅の確保ですので、上手くいくかどうかはすべて買手との交渉次第ですし、適正な価格での売却ができなければこの手法により解決することはできません。

注意点

リースバックを実行した場合、当該エリアにおける賃料相場より高めに家賃が設定されることが多いです。そのため自己破産をした後の経済力で家賃の支払いに耐えられるのかどうかがポイントになってきます。

買手が見つかって適正な価格での売却ができたとしても、収入に見合わない家賃設定だと結局すぐに破綻してしまいますので要注意です。

その他の方法

上記の方法以外にも、例えば「親族間で売買を行い、その家に住ませてもらう」というやり方があります。買い手が見つからないときでも、財力のある親族が身近にいて、その方が買い取ってくれるのならローン会社との合意のもと所有権を移すことができます。リースバック同様、所有権は手放すことになりますが、同じ家で住み続けることが可能です。

また、レアなケースですが「消滅時効の援用」によって問題を解決させられる可能性もあります。貸金返還請求権などの各種権利には時効があり、一定期間を経過した権利については債務者の方から権利が消滅したことを主張することができます。

そしてもう1つ、会社経営を行う代表の方に関しては「経営者保証ガイドラインに基づく債務整理」によって自宅を残すこともできます。会社のする借入を個人的に保証した経営者の方は次項で詳細をチェックしておいてください。

経営者保証ガイドラインに基づく債務整理について

信用力が足りていない中小企業の場合、経営者自身が保証人となって借入を行うケースがあります。このケースにおいて事業が上手くいかず倒産をしてしまうと、経営者個人は多額の請求を受けることとなり、結局会社とともに自己破産せざるを得ない事態に追い込まれることがあります。

ここで活用したいのが「経営者保証に関するガイドライン」に基づく債務整理です。同ガイドラインに基づいて保証債務を整理したときは、経営者の方に一定の資産を残すことが認められます。
※経営者以外の第三者保証人でも利用可能。

経営者の方の経済状況、残っている資産の状態にもよりますが、「華美でない自宅」に関しては残せる余地があるのです。

ただし、保証債権を持つ金融機関や信用保証協会、リース債権者など特定の債権者からの同意が必要となりますし、同ガイドラインに基づく債務整理の申し出そのものにも満たすべき条件があります。

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